父が脳出血で倒れる ~高齢夫婦の医療珍道中③~

2019年6月10日

“自分自身の目で見、自分自身の心で感じる人はとても少ない”
― アルベルト・アインシュタイン ―

【面会時間】

今日SCUの限られた時間に合わせお見舞いに行かねば。

母は習い事や女子会スケジュールが多忙なのでSCU面会時間には行けない・・・らしい。病院受付には書類提出&サインには要請があれば行くが、お見舞いには改めて時間が合えば行く・・・らしい。

『旦那の緊急事態なのに…自分の事が忙しいって(笑)』母らしい事ではあるのだが。

今日の午前中は自分の体操教室があるらしい・・・(笑)

『なんで面会時間を勝手に決めてるの?』と怒る母。病院にも都合があるかもしれないけど、こっちにも都合があるのに家族の意見は聞かないとか何様のつもり?・・・うんぬんかんぬんお怒りだ。

なるほど、と想う。面会時間やあれやこれや確かに病院都合でほぼ決められており、そこに家族の意見など反映する余地はない。

特にSCUなどの特殊な病棟は面会時間がごくごく短時間に限られた設定が多いので、仕事をしているとなかなか訪問できないのが現実である。

医療者側がいかに管理しやすいか、という事しか考えずに作られている超ローカルルールなので、医療者側には当然すぎる内容であろうが・・・家族には入院と同時に病院都合の細々したルールが強制的に課せられる

入院規約の異常に細かい事。あれはダメこれもダメ。ここは学校か?と思う。

しかもそのルールを逸脱する意見や行動に関してはブラック家族の評価を受けるのは間違いない。もしくは強制退院させられる事もあるだろう。

それがいかに病院都合で、世間一般から見れば不可解なルールであっても、医療者側は見直しなどせず、どんなに世間と乖離していようがおかまいなしである。

とにかく一言一句揃ってないと不安で不安でしょうがないかの如く節操ない文面が並ぶ。

正直、一家族の意見にかまってられる余裕がないのであろうし、何かを変更する方法も院内が複雑過ぎて出来ないのが現状なのであろうか。

医療の世界では、治療器具は日進月歩でイノベーションが凄いが、事務系は変革より現状維持の居心地に負けるのである。何かを変えるには相当な腕力が必要だ。

ちなみに入院したら家族が最も苦労する一つに洗濯物と着替え問題がある。今回は入院着やタオル、オムツなどは『入院時SET』を選択したので病院側が全て用意してくれる。

洗濯物を持ち帰って、また持ってくるというのが大変なので多少の費用はかかるが、特に遠方に入院した時や緊急時には大いに助かるシステムである。

【高次脳機能障害】

入院翌日にお見舞いに行く。まだまだ意識も朧気で、目も開かない。

生まれたての赤ちゃんのようである。

『意識が戻ればいいのになぁ・・・』と思うが、もし意識が戻ってきて自分の状況が理解できる状態になれば、どんなに辛いか考えると複雑な気分である。

さらにこちらの一番の心配は『高次脳機能障害』と呼ばれる、脳の病気特有の後遺症である。

高次脳機能障害とは何なのであろうか?まず日頃聞かない言葉である事は間違いない。

脳の病気、損傷が原因で起こる脳疾患の後遺症の一つで、ざっくり言えば言語・記憶・注意・情緒(感情)・計算・学習・判断・理解といった認知機能に障害がみられる状況を言う。

つまり、高次脳機能障害の程度によっては、日常生活や社会活動全般において何らかの支障をきたす事になるのである。

脳卒中によって高齢者が高次脳機能障害になる事が多いように通常は思うが、これは決して高齢者に限ったものではなく、若年層の10代や20代でも交通事故による脳損傷でこのような症状になることも多い。

特に若年層は病状が落ち着き、仕事ができるぐらいの身体状況になれば、仕事を探さないといけないが、高次脳機能障害で仕事を探すのは至難の業である。

家族の支援が無ければ社会復帰が非常に厳しいのが現実である。

各都道府県には高次脳機能障害の公的支援部門も存在するが決定的な役割を担えていない部分もあるのではなかろうか。

高次脳機能障害は見た目が普通なだけに周囲も分かりにくく、しかも高次脳機能障害なんて言葉や症状を知らないのが世間一般では普通なので、世間の理解を得にくく治療経過においては非常に厄介な症状であろう。

母にも『高次脳機能障害がどれだけ出るか心配』である旨話をするが、『高次脳機能障害』という単語を最後まで復唱できなかったので、今後が相当思いやられる予感しかない。

よく脳の病気をされた後に家族が『人が変わってしまった・・・』『こんな人じゃなかったのに・・・』『なんでこんな事が分からないの?』と嘆くしイラッと腹も立つのは、こういった高次脳機能障害によるものが大きい。

高次脳機能障害は本来家族が一番その症状を理解しないといけないが、患者本人に対する過去のイメージがあるので急に理解を求めるのは到底無理であり、それが一番難しく非常に厄介な問題でもある。

家族は理屈ではどういう症状なのか分かっていても、実際に患者に対する想いが優先され、高次脳機能障害を現実問題として認識するのとは別問題となるのである。

高次脳機能障害には順序立てたアプローチが有効であるが、さらっと書くのは難しいのでそれはまたの機会にしよう。

入院翌日からリハビリテーションが始まる。次回は超早期リハビリについて見ていこう。

“人生にはたった二つの生き方があるだけだ。一つは奇跡などないかのような生き方。もう一つはまるで全てが奇跡であるかのような生き方。”
― アルベルト・アインシュタイン ―